「オデュッセイア」異聞

今日はひどい。一日に3本もブログを書いた。というか書いてみた。しかも短時間で。何だか筆が、いやキーボードが止まらない。とうとう僕も狂ったか?いやそんな事はない、只以前から少しおかしいだけだ…。初めに「東海村村長の困惑」次に「タマスダレ」そしてこれが最後の?「オデュッセイア異聞」。まるであちこちを放浪、漂流するオデッセイのようだ。「2011年ブログの旅」か…?

何日か前「ナウシカ異聞」を書いた。ナウシカは「オデュッセイア」に出てくるパイアキアの王女だと。ホメロスの「オデュッセイア」は「イーリアス」と並ぶ古代ギリシァの偉大な叙事詩だと。僕らもこの話は畏敬を持って読まなければならないと…。でも塩野七生は言う。この話は“酔いどれ朝帰り亭主の荒唐無稽な作り話”だと。彼女の著作に「イタリア遺聞」というエッセー集があって、その中ではオデッセイはボロボロである。塩野の現地妻、ではなかった現地旦那は(もう別れたが)笑って言ったという。イタリア男は「オデュッセイア」を内容通りには読まないと。つまりトロイを滅ぼしてすぐ帰還するのではなく、10年もあちこちを放浪し遊びまわった男達。しかも最後に帰ってきたのはオデッセイ只一人である。つまりあの恐ろしい恐怖に満ちた漂流譚は“二日酔い朝帰り亭主の言い訳”であると…。

大体イタケは何もないど田舎の小さな島である。男達はせいぜい羊を追うより他にやる事がない。洒落た酒場もなければ綺麗な女もいない。だから男達は方々の島で遊びまわり、しまいには人魚のような若い女の所に居残ってしまい、オデッセイ一人がコソコソ帰ってきた。そして言い訳のために、壮大な恐怖の漂流譚をでっち上げた。何しろ10年もの放浪である。だから魔女が人を喰らい、一つ目巨人が部下達を殺す、おまけにジブラルタル海峡を超え冥府まで落ちると、相当荒唐無稽で壮大な冒険譚になった。ギリシァ一の智恵者、悪賢いオデッセイでなければ考え付かないホラだと。さすがにイタリア男、あのローマ人の末裔。素直な見方はしない。何しろあのカエサルの、マキャベリの、ダヴィンチの末裔である。こうなるとオデッセイはボロボロの詐欺師である…。


でも良く考えてみると、ローマ人の祖先はアイネイアス。あの滅ぼされたトロイの王子の一人である。彼はトロイの隣の町から市民とともに船に乗り、新天地を求めて地中海を彷徨った。そしてテルべ河?を遡り、辿り着いた土地の近くにいたラテン民族とローマを建国した男。つまりローマ人にとってはギリシァ人は天敵なんだ。だからその末裔のイタリア男はオデッセイにも嫌悪感を示す。彼の木馬の詭計でトロイは脆くも滅びた…。こうなるとどちらの言う事が正しいのか?でも塩野の旦那の方が何となく意地悪で餓鬼っぽい。あの壮大な漂流譚が、酔っ払いの作り話だなんて何とも夢がない。だから世界的にはホメロスは(イタリア男以外には?)今でも偉大である。大体この叙事詩は出だしからオドロオドロしい。第一歌は(第二十四歌まである)「神々の会議。女神アテネテレマコスを激励する」である。考えてみればアテネもオデッセイも智恵者である。この話の中でもオデッセイは“神と見まごう”と形容されている。だからこの話はオデッセイとアテネの知恵を駆使しての冒険譚である。つまり二人とも悪賢い(褒め言葉)神と英雄という事である…。