南の島

今は午前4時。いつもの明け方の夢で目を覚ます。今朝の夢はサンゴ礁の夢だ。暗い海にヤシの木陰が走り、穏やかな砂浜に白い波頭だけが見える。ここはどこだろう?サイパンかグァムか?僕は仕事でしか南の島にいっていない。

でも南の島は好きだった。カメラマンとタレントと人気のない砂浜に行き撮影をする。仕事が終わると夜はホテルのバーに入り浸る。大抵はフィリピンの下手なバンドが下手な曲を奏でている。そこで毎晩ビールを飲む。何ビールだったか?ブランド名は忘れた…。

ある時ホテルの部屋の係りの娘と仲良くなった。??ちゃん、名前はもう忘れてしまった。フィリピンの出稼ぎの娘である。フィリピン人にしては色が白く、彼女は山岳民族だといっていた。彼女は清純派女優のような顔をした美人だった。でも家に遊びに行ったらオジサンという男性がいた。多分夜を一緒に過ごすオジサンだろう。

秋になると二人はカナダに行くという。いわゆる出稼ぎであり、随分逞しい民俗だと思った。年中どこかの国で仕事をしている。元々フィリピンはアメリカの植民地だった。だから仕事でも欧米圏をぐるぐる回っているのだろう。考えてみれば日本人が一番国際的ではない。日本は日本の中で十分仕事があるからである。アメリカのホテルへ泊まると大抵メイドは有色人種である。

しかしとにかく南の島はいい。のんびりしているし生活パターンもシンプルだ。昼はとにかく暑いので仕事もしないでじっとしている。それでも食べていけるのだからそれで十分だ。サイパンチャモロだった。体の小さいおとなしい人種である。

多分昔は、観光地でなかった昔は、彼らは漁師として生きていたのだろう。何しろ周りは広大な太平洋である。小魚ならいくらでもいるし、時には数メートルの大物も釣れる。そして青い空と昼間はスコールがザッと降る。島の間をプロペラ機で移動するとそれが良く分かる。時々スコールの分厚い雲が通り過ぎる。とにかくシンプルな生活である…。


だから僕は時々南の島の夢を見る。いつも晴れていてスコールがザッと降り。真っ赤な夕日が太平洋に沈む。こんな所にすんでいたら、バカバカしくてまじめに仕事なんかしたくないだろう。もっともまともな仕事なんかは南に島にはない。だから観光地になる以前はとんでもないシンプルな生活をしていたんだろう…。でも所詮人間はそれでいいと思う。複雑化した現代の方が人間としては生きにくい…。だから僕は時々南の島の夢を見る。