パパンドレウの賭け

EUやフランス、ドイツを震撼させたギリシャの危機は一応回避された。首相のパパンドレウが結構危険な賭けに出た。国民投票を言い出し、さらには議会の信任決議に持ち込んだ。随分ハラハラする手を使うもんだ。でもどうしょうもないギリシャ国民と議会を黙らせるには、この手しか残っていなかったのかもしれない…。

でもこの後首相は退陣し、連立政権を組むという。果たしてスムーズに行くものか?ギリシャは今までの政権のいい加減さがこの混乱を招いた。国民も国民である。何を求めてあんな激しいデモをやったのか?国は既に実質破綻している。余剰公務員の首切りや、年金支給額の切り下げなどは止むを得ないだろう。それよりも国民が真面目に仕事を求めて、もっと必死に働かなければならない筈だ。農業でもいい、漁業でもいい、さらには国をあげての観光事業でもいい。

周りから見ていると何て自分勝手な国民かと思ってしまう。でも本当はデモ参加者は国民の一部だろう。多くの国民はこの駄目市民に嫌気がさしているのかもしれない。事実国民の8割方はEUの救済策に賛意を表している。パパンドレウはこういう背景を考慮し、局面の打開に危険な賭けに出た。でももう一方でEUやフランス、ドイツの考え方にも疑問が湧いてくる…。こんな劣等生はEUから放逐した方が早いのに、何故こんなに残留にこだわるのか?これに続くイタリー、スペインが恐ろしいのかも知れない…。

今「オデュッセイア」に引き続き「イリアス」を読んでいるが、この両書だけではなく、ギリシャ神話や歴史を考えていくと、何となくこの国の国民性が判るような気がする。太古からこの国の都市国家群はバラバラであった。そしていつも隣国同士で争いを続けていた。しかし大きな危機に際してはこの都市国家群が力をあわせて対抗した。だからペルシャの大軍も跳ね除けた。あのデルフィの神託「聖なるサラミス」と海戦での勝利…。こういう国民性を考えたらむしろ突き放した方が、一つにまとまるかもしれない。何しろ古代数波に渡る異民族の流入による多民族、多層国家だからだ。だから結構皆バラバラだ。そしてあるのは農業と漁業と観光だけだろう。果たして日本のように工業国家に脱皮できる可能性は少しでもあるのだろうか…?

それと以前ギリシャ神話は無茶苦茶だ、何でも有りだと書いたが、「イリアス」を読んでいてもそれは感じる。聖なるイリアストロイアの戦いは3人の女神のくだらない争いから起こった事は以前に触れた。それだけではなく、神々は戦場にまで押しかけて片方に加担する。それどころか神のくせに、人間に傷つけられ泣きながらオリンポス山に戻って行く。神々は不死だから死なないが、痛みは人並みにあるらしい。戦争の神マルスも美の女神アフロディテも人間の放った矢や槍に傷つけられる。そして泣きながら父なるゼウスの元に戻ってくる…。

何て情けない神々だ。人も平気で神を傷つける。だからギリシャはこれからも何が起こるかは分からない?日本人にとっては理解に苦しむ民族、人々だ。先日書いた「オデュッセイア」も父なるゼウスとパラス・アテネはオデッセイを支援し、ポセイドンは彼を破滅に追い込む。その結果やっと20年目にイタケに戻って来た…。


でも父なるゼウスは実は海神ポセイドンや冥府の王ハデスの弟である。つまり古代ギリシャは末子相続だったんだ。これは遊牧民族に多い習慣だ。つまりギリシャ市民も多くは遊牧民族の血を引く者達だろう。どうりで何だか沙漠の民に良く似ている。今ギリシャの対面や周辺のアラブ国家では革命の嵐が吹き荒れている。そういう意味ではギリシャが今混乱しているのも無理のない事かも知れない。