奉天会戦

坂の上の雲」昨日の第3回目は陸軍の奉天会戦が中心の話であった。日本はまだ維新後半世紀もたっていない明治37年の頃。広大寒冷な満州の野でこの大会戦は行われた。ロシア軍32万、日本軍25万、合計57万の大部隊が100キロに渡って展開した大会戦であった。兵力は圧倒的にロシア側が有利で、大砲もロシア1200門に対し日本は1000門弱、これもロシアが圧倒的に有利であった。だから物量から見れば日本が勝てる相手ではなかった…。

何がこの会戦の勝敗を分けたのか?日本軍の奥行きは浅く、ロシア側は深かった。でも日本軍の薄さはロシアには分からない。だから負けられない日本は、かなりのハッタリをかました事になる。広く戦線を展開ししかも常に前進の姿勢を示した。そして司令部は軍の両翼を張り出させロシア軍を包囲する姿勢を示した。左翼は乃木の第3軍を突出させ、その先鋭に秋山支隊を置いた。この秋山支隊が日本のビッグサプライズになった。秋山支隊は騎兵であるにも関わらず、馬を下り陣地を構えて戦った。一方騎兵としての役割も果たす。永沼隊3000を敵陣深くに先行させ、鉄道の爆破や後方撹乱を行った。

ロシア軍の総司令官クロパトキンは、貴族でインテリであった。彼は自分の圧倒的に有利な戦力でゴリ押しするのではなく、神経質にも、日本軍に包囲され退路を断たれるのを恐れてしまった。つまり見事に児玉源太郎のハッタリ作戦に引っ掛かってしまった。それと秋山支隊は今でいうユーテリティ部隊?で、便利・巧妙の能力、パワーを持ち合わせていた。彼は自分の部隊に確か20丁の?機関銃を用意させた。この機関銃がロシアの大攻勢を何とかしのぎ、日本軍を大崩壊から救った。だからもし日本軍に秋山支隊が存在しなければ、日本軍は大崩壊を起こし完敗していただろう。

それと日本はこの半世紀、戦争に次ぐ戦争で戦い慣れしていた。四境戦争、戊辰戦争西南戦争日清戦争ときわどい戦いを繰り返し、その指揮官達がこの戦争の指導部を構成していた。だから戦いの駆け引きを良く心得ていた。それと秋山の用意した機関銃も、過去の戦争で大きな威力を発揮していた。古くは戊辰戦争で長岡藩がこれを用い、官軍の鉄甲戦艦にも装備され、直近では旅順要塞の機関銃で日本軍は死体の山を築いた。その機関銃を秋山好古は20丁も自軍に用意した。多分この機関銃は一丁で1000人の歩兵に値しただろう。だから奉天会戦では日本軍は踏み止まれた…。

その結果ロシア軍は奉天を捨てて退却する。でもクロパトキンにとってはそれは戦略の一部であった。でも世界はそうは見ない。クロパトキンの退却将軍の悪評はさらに高まった。でも日本軍はここまでで精一杯である。多分もう精も根も尽きかけていた。児玉源太郎はこの時点で直ちに東京に戻る。これを機にアメリカに働きかけロシアとの停戦交渉を進める為である。この後に日本軍はさらに有利な交渉材料を獲得する。それが来週放映される、日本海海戦によるバルチック艦隊の壊滅である。これも見事な完勝で、確かバルチック艦隊38隻の内生き残ったのはほんの2〜3隻であった。これには世界も驚いた。こんな鮮やかな完勝は過去の世界の歴史にもなかった筈だ。

しかも日本海軍はT字戦法?というとんでもない戦い方をする。この戦いもまさに奇跡と言おうか、マジックと言おうか?でもこの戦い方は秋山真之のご先祖様の瀬戸内水軍、つまり海賊の戦法であったという。だから考えてみれば日本は勝てそうもない戦争を、かなり破天荒な戦法と幸運で勝ち取った事になる。つまり一種の奇跡が起きたのだろう。

これは世界の近代以降の戦争、戦いを見ていけば、何となく納得出来る所がある。つまり大きな戦いには物理的な力だけではなく、勝者には天佑、天の助けのようなものが存在するのではないかと思われる。この戦いは領土拡大の野望に燃える、南下を続けるロシアに対し、日本軍は日本を守ろうとする必死の思いがあった。だから天は日本の味方をした。天の正義は日本にあった。だから何とかこの大国と引き分けに持ち込めた…。


でも不義の戦いでは日本は勝てなかった。日米戦争では正義はアメリカ側にあった。だから負けようもない?ミッドウェイで日本の空母は悉く沈んだ。これは単なる不運というよりは、天の戒めと受け取ったほうが分かりやすい。そしてドイツも負けた。しかしその後アメリカはヴェトナムで大敗する。そしてアフガンもイラクもとても勝利とは言えない。だからそういう意味では、天はやっぱり公平なのかも知れない。という荒唐無稽な結論、独断と偏見の意見を持って今日は筆を置こう…。


※これを書いている途中とんでもないニュースが入ってきた。世界は激しく動いている。北朝鮮キム・ジョンイルが死んだらしい。2日前の12月17日、現地指導に行く途中突然急病で死んだという。多分心筋梗塞かなんかだろう。発表を2日遅らせたのは後継問題、後継体制などの整理のせいだろう。果たしてどんな体制になるのやら?果たしてキム・ジョンウンに直ぐ権力が移行されるのか?中国やロシアはどう出るのか?何となく危険で不透明な感じがする現在の状況である…。