幸福の王子

子供の頃アンデルセンだったか「幸福の王子」の童話を読み涙を流した記憶がある。幸福の王子と優しいツバメの話。王子も優しく人々の不幸を見て何かをせずにいられない。そして自分の持っているものをドンドンその人達に与え、自らはみすぼらしくなっていく。ツバメも渡りの時期を逃し死んでしまう。まァこれは童話というよりは寓話だ。

話はまったく別だが、近頃の日本はスポーツで「幸福の王子」のような若者達が出始めている。昔のど根性スポーツマンではなく、まるで王子のように美貌でホッソリしていて、そしてお利巧で優しい。彼らはとても親を泣かすような事はしないだろう。例えばゴルフの石川遼とか、野球の斎藤佑樹とか。斎藤は昔からハンカチ王子と言われ、石川もハニカミ王子だったっけ?しかも彼らは抜群の実力があるが、そんな努力の跡は少しも感じさせない。いとも簡単にその実力を発揮しているように見える。

男子ゴルフはそれまでオッサンの野暮ったいスポーツだったが、石川の登場でイメージは一変した。欧米並みのスマートなスポーツになった。それまで日本のプロゴルファーにはインテリジェンスが感じられなかった。尾崎などはまるで土方かヤクザだった。青木にしても少し訛った田舎のオジサンだった。しかし石川の登場でゴルフのイメージは一新された。今や女性も子供も応援するグレートスポーツになった。(そういう意味では石川は日本男子プロゴルフ界の救世主である)尤もそのはるか前から女子ゴルフは宮里藍上田桃子などのカワイコチャン・プレーヤーの活躍でイメージを一新していた。だから日本のスポーツ界も随分イメージを変えてきた。もう昔の体育会的な汗と涙とど根性の暗〜いイメージは少なくなってきた。(勝つために猛練習をするのは当たり前の事である。でもそれは自分の為だし、皆に見せるものでもない…)

これはゴルフ・野球だけではなく、女子バレーもデカイが美人のカワイコチャン・プレーヤーがアイドルになり、バドミントンもオグシオが活躍し、サッカーにも大量のイケメン達がいる。つまり日本人の顔つきが近頃変わってきた。昔の体育会的な暗さはもうほとんどなくなってきた。オリンピックの選手達でさえ近頃は「日本のために」とは言わない。「楽しんでプレーをします」と言いながら時々メダルを取ってくる。本来のスポーツは楽しむものだからそれでいいんだ。だから近頃の日本人選手の表情は、韓国や中国の選手とはチョット違う。彼らはまだヒキツリや暗さを残している。キム・ヨナは暗いが、浅田真央はアッケラカンとしている。でもその裏には猛練習が隠されているが、そんな事はチットモ感じさせない。

日本はそういう意味では良くなってきているかもしれない。つまり永〜い平和と豊かさで、日本人の若者の顔つきが変わってきたのだ。近頃街を歩くとホッソリとした美人の女の子が随分増えた。男の子も可愛いアイドルみたいな男の子達が増えた。これが多分65年の平和と豊かさの結果だろう。その間にまず女の子の歌手・タレントのアイドル化が進み、ジャニーズ事務所が可愛い男の子達を量産した。そして漫画やアニメが流行り、両者の境が今やなくなっている。アニメのカワイコチャンはそのままテレビのアイドルと繋がる、日本独特の不思議な風景が現出した。(これもクールジャパンというべきか?)


でも今後は分からない。何時までこの幸せの王子達や、可愛い王女達が存続するのか?しかし確実に日本の若者の顔つきが変わってきた事は、多分今までの日本の進み方が間違っていなかった事の証明だろう。但し現在は日本だけのこの幸せが続かないだろう事も事実である。今や経済状況や国際情勢も厳しい。もう数十年すると日本人の若者の顔ももう少し厳しくなるかもしれない。アニメとリアルの渾然一体とした顔つきは変わらざるを得ないかも知れない。でもそれもいい、可愛い顔が少しピリッとするのは。元々日本人はセッカチで変わり身が早く、獰猛な所も有る民族だからだ…。