汽車に乗る少年達

たまたま付けていたBS1で結構とんでもない番組をやっていた。でもそれは厳然たる事実だった。悲しい映像というべきか、逞しいというべきか?少年達が貨物列車に鈴なりになっている。南米の貧しい国から、ホンジュラスやグァテマラ、メキシコから、アメリカを目指す少年達だ。勿論密入国を目指している。少年達は貨物列車の屋根の上や接続部の狭いスペースに鈴なりになっている。危険この上ない状況だ。毎年10万人の少年達がアメリカを目指すという。当然その成功率は低く、死亡率は高い。100人の内10〜20人は死ぬという。汽車から振り落とされたり、トンネルで頭をはねられたり、とにかく夜も寝ていられない。眠る事は死を意味するからだ。それに10歳未満の子供もいる。彼らは汽車を「獣」と呼ぶ。簡単に彼らの命を奪う野獣だからだ。

彼らは何故そんな危険な旅を何千キロも続けるんだろう?しかも最後には死の沙漠が待っている。でもそれは彼らにとって唯一の夢であり、希望であるらしい。それだけ彼らの国は貧しい。彼らの親は子供が多く、収入は少なく、彼らの旅立ちを必ずしも反対していない。こんな貧しい国にいても子供達に未来はないからだ。南の貧しい国の北には世界一豊かな国がある。だから彼らはアメリカを目指す。密入国して働いたり、養子になることを目指す。でもほとんどは成功しない。途中でつかまるか死ぬか病気になるか。そして本国に送還される。でも貧しい国にいてもしょうがない。しばらくすると彼らは再び汽車に乗る。アメリカには出稼ぎに来ている親や親戚がいる事も多い。何という南北の落差。しかしアメリカでも貧しい人は貧しいはずだ。それでもどうしょうもなく自国を捨てる…。

アメリカに行くには「密入国請負人」という怪しい存在がある。彼らはいい加減でお金も高い。そして旅の途中彼らを保護する人道組織も有る。「グループベータ」という人道支援組織――食料や医療・医薬品を提供する。「移民の家」という救護施設――食事や安全な睡眠を提供。列車情報や密入国情報も教える。彼らは蜜入国を止めるのではなく、それを厳然たる事実として受け止め、彼らを出来るだけサポートする。でも少年達のほとんどは途中で死ぬか「移民問題事務所」に捕まり、本国に送還される。そしてほんのわずかな少年達が国境を越え、親戚や知人を訪ねていく。それでも不法入国者である事には変わりない。それでも自国にいるよりはいいんだろう。何という可哀想な子供達だ。でもこれは厳然たる事実でまだ目標とする国が有るだけでもいい。アフリカなんかはほぼ絶望的だろう…。平和ボケの日本人にはとても理解できない状況だ。日本では職種を選ばなければ何とか食っていける。いざとなれば生活保護の申請も出来る。だからまだ逃げ場が有る…。


世界にはまだまだ闇の世界が広がっている。しかも今後世界の人口は増え続ける。人々の生活は益々貧しくなる。仕事どころか食料も飲み水もない世界が現在も存在し、毎年多くの人達が死んでいる。多分そのオーダーは1000万人単位だろう。それにしても今日の映像、子供が鈴なりの列車の映像は異様だった。何卒彼らに神のご加護とお導きを…。でも彼らも自分の冒険の成功を祈っていた。多分彼らの親達も祈っている事だろう…。