「ゆるりの里」―1

ここ数日日本は地震原発騒ぎで騒然としている。この地震津波の規模が大きかっただけではなく、首都圏でも地は大きく揺れ、そのあとの物不足も何だか凄まじい。今や近くのGSも限定販売になった。おまけに福島原発の動向もどうも怪しい。次々と重大な事故が続く。日本の全てがガタガタと音を立てて崩壊し始めたようだ。「ホウカイ」なんちゃって!(ダジャレを言ってる場合ではないぞッ!)これでは昔の小松左京の小説みたいだ。韓国の新聞にも「日本沈没」と出ていた。僕の「塩の夢」も穏やかではない。東日本は放射能の嵐に襲われるかもしれない。おお何と恐ろしい…。時の流れとしてこのあと関東大震災東南海大地震?に繋がらなければいいんだけど。こんなストレスのたまる状況の中、これに対する反作用なのか?僕は今朝布団の中で何となくのんびりした事を夢想していた。名づけて「ゆるりの里」物語。


気候の良い暖かい土地に、つい最近潰れた小さなホテルがあった。全部で30室位の2階建ての瀟洒なホテルだ。部屋は皆ユッタリしたツインルームだ。小高いホテルの前、南面には明るい海が見え、後ろはコンモリした森や山に囲まれている。周りには青々とした畑も広がっている。こんなノンビリしたホテルだったが、この不景気と地の利の悪さに祟られた。風光明媚だが有名観光地ではなく、交通便もやや悪い。でも車を使えば何でもない。だから考えようによっては勿体ない施設である。そこを突然あるオジサンが買った。名前も偶然「小路(おじ)さん」だった。このオジサンはかなりの資産家で、今まで東京でバリバリ自分の会社を経営していたが、60間近になりやや疲れてきた。業績は悪くなかったが、見ていると営業マン達は売上売上で疲れきっている。経理部門も円高で何時もピリピリしている。何だかちっとも余裕がない。それでいい加減に嫌気がさし社長を辞め、ついでにこの田舎のホテルを購入し、オットリした奥さんとノンビリ暮らそうとした。前は明るい太平洋、夏は泳げるし、潜れるし、年間を通じて釣りも楽しめる。回りは畑で、夫婦で少し野菜も作ってみたい。近くの小川は清流で何だかキラキラした魚が泳いでいる。後ろの森や山では山菜やキノコも取れる。それに近くに原発もない。津波もここまでは届かないだろう。だからオジサンにとってはこのホテルは、ある意味で彼の小さな理想郷だった。

この辺は山本さんという農家があり、家族と近くの農業高校の生徒を使って結構大きな農園を経営していた。近頃農家の高齢化で耕作放棄地も多い。山本さんはそれらも買収して、機械を使って効率的な農業を経営していた。そして販売も農協を通すのではなく、自分でホームページを作り野菜を直販している。山本さんは葡萄―ピオーネや桃も作っている。山本さんにとってこのホテルも重要な顧客だったので、このホテルの閉鎖は彼にとってはショックだった。だから資産家のオジサンがこのホテルを買ったことを知ると彼はすぐこの資産家を訪ねた。オジサンの小路さんもただここで老後を暮らすだけではなく、多少のビジネスをノンビリやろうとしていたので、二人のニーズは合致した。二人で力を合わせこの里を豊かで楽しい、笑える場所にしようと…。

但しどちらもあまりガツガツしたくはない。また儲ける事だけを目的としたくない。つまりどちらもノンビリした性格だった。山本さんの子供達も――娘二人に男の子一人もオットリした性格だった。男の子、勲(いさむ)も真っ黒に日焼けしていた。彼はスポーツというより、海に潜ったり、山でキノコや木の実を取る事が得意な野生児だった。勿論釣りに関しても少年名人だったが、ただ少しエッチだった。でもこれは普通の田舎の男の子に共通する性格だ。(ホンマかいな?)小学生の頃はスカートめくりの名人だったが、中学生になると女生徒の反撃に合い近頃はやや大人しい。逆に女の子に囲まれ、ズボンを剥ぎ取られ、パンツにマジックでデカデカと落書きをされたのだ。「色情狂」と。さすが女子中学生、難しい言葉を知っている。おまけに大事な所を赤チンでマッカッカにされた。勲はその後しばらく学校を休んだ。それだけショックが大きかったんだろう。(でも本当は近頃赤チンは売っていない。店で赤チンと言ってもヨードチンキを出してくる。あの昔懐かしいマッカッカな赤チンは今はない。まことにご愁傷様な事で…)

オジサンと山本さんのミーティングは進み、この事業を株式会社にするのではなく、NPO法人にしようという事になった。農園の一部を体験農業施設にし、ホテルで山本さんの新鮮な野菜や、近くの牧場の美味しい牛肉を食べてもらう。幸いこのホテルのシェフはパリ仕込みの腕のいい料理人であった。オジサンは数人の調理スタッフやホテルスタッフもそのまま雇う事にした。これらも含めて30人位がこの農園ホテルの総員だ。勿論子供達を含めて。オジサンと山本さんは相談の上、この施設を「ゆるりの里」とネーミングをし、コミニュケーション・スタッフがブランディングを進め始めた。でも何だか少ししまらない感じだ。ロゴもイラストも勿論ユルキャラだ。だから山本さんの農産物も「山本農園」ではなく「ゆるりの里の野菜」とデザインされた。山本さんは「なるほどッ」と感心する。これなら高く売れそうだ。(本当かな〜?)山本さんは「量より質だッ!」と独り言を言う…。今まで山本農園のキャラクターになっていた娘達も、このネーミングは気に入ったようだ。娘達もどちらかというとユルキャラだった。この事業は今までの有り物を再利用したものなので、大したイニシヤルコストもかからず、スムーズに進み始めたが…。


なんちゃって、話は何となく進み始めたが、このあと一体どうなる事やら?それともこれで打ち切りか?誰かストーリーの面白い進め方を教えてよッ!奇想天外か波乱万丈か?この話を進めるためには、ホテル経営の知識や農業経営の知識も必要だ。僕の暇つぶしとはいえ、この集団を描く事はそんなに楽ではなさそうだ…。


※昨日書いた福島原発の事は、僕のもう一つのブログ「3%エスパーの夢日記」の3月15日「100キロ以内は逃げろッ!」に書いてある。本当にあの町は、あるいは関東圏は「塩の町」になりそうだ。本当に恐ろしい事だ…。